マイソールの人喰い熊事件|インドで発生した悲惨な獣害事件を解説

マイソールの人喰い熊事件|インドで発生した悲惨な獣害事件を解説

マイソールの人喰い熊事件

マイソールの人喰い熊事件は、インド南部のカルナータカ州マイソールで発生した獣害事件です。

この熊は、1957年に少なくとも12人を死亡させ、24人を襲撃するという異常に攻撃的なインドのナマケグマです。熊は、ハンターであるケネス・アンダーソンによって殺害され、彼は回顧録の中でこの熊を以下のように表現しています。

ナマケグマは興奮しやすいですが、一般的には無害な生き物です。この熊は罪深い性質を持っており、挑発に乗らず、何人もの人間を無計画かつ意図的に殺害し、最も恐ろしい方法で死に至らしめました。

マイソールのナマケグマの異常な行動を説明するのに、様々な理由が考えられました。
熊の襲撃をうけた町に住む人たちの中には、ナマケグマは子グマを盗まれた雌が人間に復讐しているのだと考える人もいました。また、以前この熊が少女を連れ去り、その少女が村人に助けられたことが熊の怒りを買ったとする説もあります。ケネス・アンダーソンは、この熊が以前に人間によって傷つけられたことが原因で襲撃を行ったと考えました。

事件の発生したカルナータカ州マイソールの場所

最初の攻撃

この熊は、インドのマイソール州にある、アルシケレの町近くのナグバラ丘陵で最初の攻撃を開始しました。岩の多い丘に住み着き、そこから町に降りてきては畑を荒らしました。獰猛になるにつれ、昼夜を問わず出没し人々を悩ませるようになりました。

ナマケグマは典型的な方法で、爪と歯で被害者の顔を攻撃しました。生き残った者は通常、片目または両目を失い、人によっては鼻や頬を噛み切られました。死んだ者は、顔が頭から完全に引きちぎられていることが多く、少なくとも3人の犠牲者は、身体の一部を食べられました。

最初の熊狩り

ハンターであるケネス・アンダーソンが熊の襲撃を知ったのは、彼の友人でイスラム教徒のブックスという老人が、彼の家の霊廟に来るようにと緊急の呼び出しの葉書を送ったことでした。ブックスの22歳の息子が、落ちていたイチジクを食べていたところを、熊に襲われてしまったからです。

アンダーソンは、簡単に熊を狩れると考えていた為、長旅の準備はしておらず、電気トーチとライフル、着替え1枚だけを持参しました。

夕方に霊廟に到着したアンダーソンは、日が暮れるまでに熊を撃つつもりでした。イチジクの木の近くから探し始めて、1.5kmほど歩きましたが、熊を見つけられませんでした。その後、落花生畑を探したが見つからず、霊廟に戻りました。その後、アンダーソンは夜中に2回ほど捜索を行いましたが、いずれも熊を発見できませんでした。翌日の昼、アンダーソンは熊が住んでいると思われる洞窟の入り口に向かいました。洞窟に石を投げ入れても効果はなく、アンダーソンは元いた街に戻り、再び熊が襲ってきたら電報で知らせるようにとブックスに頼みました。

二度目の熊狩り

その1ヵ月後、近隣の小さな町、サクレパトナで2人の木こりがクマに襲われ、1人が死亡しました。アンダーソンは森の管理人から連絡を受け、熊の討伐を依頼されました。アンダーソンは熊の居場所の正確な場所を要求し、10日後、熊は町から3マイル離れた丘の上のイオンケレという湖に通じる歩道の近くに住んでいるとの回答を得ました。そして、その熊が、定期的に巡回していた森の管理人を襲ってしまったことも明らかになりました。アンダーソンは、マイソール森林局が所有するバンガローに本部を構え、討伐にそなえました。翌日の夕方、バンガローに一人の男が駆け込んできて、熊の隠れ家とされる丘の近くで牛を放牧していた弟が熊に襲われたと助けを求めにやってきました。

アンダーソンは、ライフルと懐中電灯を持ち、3〜4人の助っ人を連れて、ジャングルの中を約8キロほど、1時間半かけて進み、低木の多い丘に突き当たりました。アンダーソンは、被害者の兄が教えてくれた襲撃地点を目指しました。しばらく雑木林の中で被害者を探していると、かすかなうめき声が聞こえてきました。木の下に倒れていたところを発見された被害者は、意識を失い、ひどい切り傷を負った状態でした。瀕死の状態である被害者を、アンダーソンは担いでしばらく歩きましたが、足首を捻挫して倒れてしまいました。被害者は朝5時に死亡し、アンダーソンはその後、森の管理人と十数人の村人によって発見されました。アンダーソンは病院に1週間入院した後、熊の討伐を再開しました。

三度目の熊狩り

アンダーソンが入院している間に、熊は湖のほとりで2人の男を襲撃しました。アンダーソンは退院後、熊が村から少し離れた畑に出没していることを聞き、現地に向かいました。アンダーソンは午後5時に現地に到着し、一番大きな木の下で一晩を過ごし、熊の出没を待ちました。午後11時頃、遠くで熊が木の根を掘る音が聞こえ、その1時間後、熊は畑の周辺までやってきました。アンダーソンが松明で熊を照らすと、熊は警戒して後ろ足で立ち上がりました。アンダーソンはその熊の胸を撃ち抜き、熊は死に絶え、討伐は完了しました。